14 一文なしになった時、その国に大ききんが起こり、食べる物にも事欠く有様でした。
15 それで、その地方のある農夫に頼み込み、畑で豚を飼う仕事をもらいました。
16 あまりのひもじさに、豚のえさのいなご豆さえ食べたいほどでしたが、だれも食べる物をくれません。
17 こんな毎日を送るうち、彼もやっと目が覚めました。 『あーあ、家なら雇い人にだって、あり余るほど食べ物があるだろうな……。 なのにおれときたら、なんてみじめなんだ。 こんなとこで飢え死にしかけてる。
18 そうだ。 家に帰ろう。 帰って、お父さんに頼もう。 「お父さん。 すみませんでした。 神様にも、お父さんにも、罪を犯してしまって……。
19 もう息子と呼ばれる資格はありません。 どうか、雇い人として使ってください。」』
20 決心がつくと、彼は父親のもとに帰って行きました。 ところが、家までは、まだ遠く離れていたというのに、父親は息子の姿を、いち早く見つけたのです。 『あれが帰って来た。 かわいそうに、あんな、みすぼらしいなりで……。』こう思うと、じっと待ってなどいられません。 走り寄ってぎゅっと抱きしめ、口づけしました。