1 さて、イエスの死と復活から、七週間が過ぎました。 五旬節(ユダヤ教の祭りの一つ)の日です。 信者たちが一堂に集まっていると、
2 突然、天からものすごい音がしました。 まるで、激しい風が吹きつけるような音です。 それが、家全体にごうごうと響き渡ったのです。
3 そして、めらめら燃える炎の舌のようなものが現われ、みんなの頭上にとどまりました。
4 するとどうでしょう。 その場にいた人は、一人残らず聖霊に満たされ、知りもしない外国語で話し始めたではありませんか。 聖霊が、それだけの力を与えてくださったのです。
5 その日、エルサレムには、たくさんの敬虔なユダヤ人が、祭りのために、世界のあちこちから集まっていました。
6 この大音響に、人々は、いったい何事かと駆けつけましたが、弟子たちの話していることばを聞いて、すっかり面食らってしまいました。 まぎれもなく自分たちの国のことばだったからです。
7 さっぱり訳がわかりません。 ただ口々に、こう言い合うばかりでした。 「こ、こんなことって、あるかい。 みんな、ガリラヤ出身の人だというのに……。
8 それが、私たちの国のことばで、すらすら話している。
9 ここには、パルテヤ人、メジヤ人、エラム人、またメソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポント、アジヤ、
10 フルギヤ、パンフリヤ、エジプト、それにリビヤのクレネ語が使われている地方などから来た人たちがいるし、ほかにも、ローマからの旅行者で、もともとのユダヤ人もいれば、ユダヤ教への改宗者もいるといったぐあいに様々だ。
11 あっ、そうそう、クレテ人やアラビヤ人もいたっけ。 それがどうだ。 それぞれの生まれ故郷のことばで、神様のすばらしい奇蹟の話を聞くとはなあ……。」
12 人々はただ呆然として、「いったい、どうなってるんだ?」と顔を見合わせました。
13 しかし、中には、「なに、あいつら、酔っぱらってるだけさ」と、あざける連中もいました。
14 するとペテロが、十一人の使徒と共につかつかと進み出て、声を張り上げ、人々に語りかけました。「よそから来られた方も、エルサレムに住んでおられる皆さんも、どうぞお聞きください。
15 皆さんの中には、私たちが酒に酔っているのだとおっしゃる方もいますが、そんなことは絶対にありません。 酒に酔うには時間が早すぎます。 朝の九時から酒を飲む人はいないでしょう。
16 いま見ていることは、まさに、何世紀も前に、預言者ヨエルが預言したことなのです。
17 『神は言われる。終わりの日に、わたしはすべての人にわたしの霊を注ぐ。その時、あなたがたの息子、娘は預言し、青年は幻を見、老人は夢を見る。
18 聖霊は、男女を問わず、わたしに仕える者たちに注がれる。すると、彼らは預言をする。
19 また、わたしは天と地に不思議なしるしを現わす。血と火と煙の雲だ。
20 主の恐るべき日が来る前に、太陽は暗くなり、月は血のように赤くなる。
21 しかし、主にあわれみを求める者はみな、あわれみを受けて救われる。』
22 ああ、皆さん。 これから申し上げることを聞いてください。 よくご存じのように、ナザレのイエスは、大ぜいの人の前で、すばらしい奇蹟を行なわれました。 神様は、こうして、だれにもはっきりわかるように、イエス様の身元を保証なさったのです。
23 神様は、あらかじめ計画したとおり、この方を、あなたがたの手でローマ政府に引き渡し、十字架で処刑することをお許しになりました。
24 そうした上で、この方を死の恐怖から解放し、復活させたのです。 この方が、ずっと死んだままでいることなど、ありえないことだったからです。
25 ダビデ王は、イエス様のことをこう言っています。『主はいつも私と共におられる。主が私を助け、神の大きな力が私を支える。
26 だから、心は喜びにあふれ、舌は主をほめたたえる。たとい死んでも、私には望みがある。
27 あなたは、私のたましいを地獄に放置せず、あなたの聖なる息子の体を、朽ち果てさせることもない。
28 私を生き返らせ、あなたの前で、すばらしい喜びにあふれさせる。』
29 愛する皆さん。 考えてもみなさい。 ダビデはここで、自分のことを語っているわけではありません。 そうでしょう。 ダビデは死んで、葬られ、その墓は今でも、ちゃんと残っているではありませんか。
30 しかし、彼は預言者でしたから、子孫の一人がメシヤ(救い主)となり、ダビデの王座につくと神が誓われたことは、知っていたのです。
31 それで、遠い将来を望み見ながら、メシヤの復活を預言しました。 メシヤのたましいは地獄に放置されず、その体が朽ち果てることもない、と語ったのです。
32 そのとおり、神様はイエス様を復活させました。 私たちはみな、そのことの証人です。
33 今イエス様は、天で最も名誉ある神の右の座についておられます。 そして、約束どおり、父は聖霊様を送ってくださいました。 その結果、たったいま見聞きしたことが起こったのです。
34-35 いいですね。 ダビデは、決して自分のことを言ったのではありません。 ダビデは天にのぼったことはないからです。 それに、当のダビデが、こうも言っています。『神は私の主に言われた。「わたしがあなたの敵を完全に征服するまで、わたしの右に座っていなさい。」』
36 ですから、イスラエルのすべての人に、はっきり言っておきます。 神様は、あなたがたが十字架につけたイエス様を主とし、キリスト(救い主)とされたのです。」
37 ペテロのことばは、人々の心を強く打ちました。「それじゃあ、私たちはどうすればいいんでしょう。」 あちらからもこちらからも、使徒たちへの質問の声があがりました。
38 ペテロは答えました。 「一人一人が、罪の生活から足を洗って神様に立ち返りなさい。 そして、罪を赦していただくために、イエス・キリストの名によってバプテスマ(洗礼)を受けなさい。 そうすれば、聖霊様という贈り物をいただけます。
39 それは、キリスト様が約束してくださったのです。 あなたがたは言うまでもなく、あなたがたの子孫、また遠くにいても、私たちの神である主が、ちゃんとお招きになったすべての人にも、与えられるのです。」
40 このあとも、ペテロの説教はえんえんと続きました。 イエスのことや、悪に満ちたこの時代から救われなければならないことを、ことばを尽くして訴えたのです。
41 この日、ペテロの言うことを信じた人はバプテスマを受けましたが、その数は全部で三千人ぐらいでした。
42 みな、使徒たちの教えをよく守り、聖餐式(キリスト教の儀式の一つ)や祈り会に毎回きちんと出席していました。
43 だれもが、心から神様を恐れ敬うようになり、一方、使徒たちは次々と奇蹟を行ないました。
44 信者たちはみないっしょにいて、それぞれの持ち物を分け合い、
45 金が必要な人には、財産を売り払って与えました。
46 毎日、神殿できちんと礼拝をし、聖餐の時は、小人数に分かれてめいめいの家に集まり、心から喜びと感謝にあふれて、食べ物を分け合いました。
47 心から神を賛美する彼らに、町中の人は少なからず好感をいだき、神もまた、救われる者を毎日、仲間に加えてくださいました。美しの門で