マルコによる福音書 8 JA1955

第8章

1 そのころ、また大ぜいの群衆が集まっていたが、何も食べるものがなかったので、イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、

2 「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。

3 もし、彼らを空腹のまま家に帰らせるなら、途中で弱り切ってしまうであろう。それに、なかには遠くからきている者もある」。

4 弟子たちは答えた、「こんな荒野で、どこからパンを手に入れて、これらの人々にじゅうぶん食べさせることができましょうか」。

5 イエスが弟子たちに、「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります」と答えた。

6 そこでイエスは群衆に地にすわるように命じられた。そして七つのパンを取り、感謝してこれをさき、人々に配るように弟子たちに渡されると、弟子たちはそれを群衆に配った。

7 また小さい魚が少しばかりあったので、祝福して、それをも人々に配るようにと言われた。

8 彼らは食べて満腹した。そして残ったパンくずを集めると、七かごになった。

9 人々の数はおよそ四千人であった。それからイエスは彼らを解散させ、

10 すぐ弟子たちと共に舟に乗って、ダルマヌタの地方へ行かれた。

11 パリサイ人たちが出てきて、イエスを試みようとして議論をしかけ、天からのしるしを求めた。

12 イエスは、心の中で深く嘆息して言われた、「なぜ、今の時代はしるしを求めるのだろう。よく言い聞かせておくが、しるしは今の時代には決して与えられない」。

13 そして、イエスは彼らをあとに残し、また舟に乗って向こう岸へ行かれた。

14 弟子たちはパンを持って来るのを忘れていたので、舟の中にはパン一つしか持ち合わせがなかった。

15 そのとき、イエスは彼らを戒めて、「パリサイ人のパン種とヘロデのパン種とを、よくよく警戒せよ」と言われた。

16 弟子たちは、これは自分たちがパンを持っていないためであろうと、互に論じ合った。

17 イエスはそれと知って、彼らに言われた、「なぜ、パンがないからだと論じ合っているのか。まだわからないのか、悟らないのか。あなたがたの心は鈍くなっているのか。

18 目があっても見えないのか。耳があっても聞えないのか。まだ思い出さないのか。

19 五つのパンをさいて五千人に分けたとき、拾い集めたパンくずは、幾つのかごになったか」。弟子たちは答えた、「十二かごです」。

20 「七つのパンを四千人に分けたときには、パンくずを幾つのかごに拾い集めたか」。「七かごです」と答えた。

21 そこでイエスは彼らに言われた、「まだ悟らないのか」。

22 そのうちに、彼らはベツサイダに着いた。すると人々が、ひとりの盲人を連れてきて、さわってやっていただきたいとお願いした。

23 イエスはこの盲人の手をとって、村の外に連れ出し、その両方の目につばきをつけ、両手を彼に当てて、「何か見えるか」と尋ねられた。

24 すると彼は顔を上げて言った、「人が見えます。木のように見えます。歩いているようです」。

25 それから、イエスが再び目の上に両手を当てられると、盲人は見つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと見えだした。

26 そこでイエスは、「村にはいってはいけない」と言って、彼を家に帰された。

27 さて、イエスは弟子たちとピリポ・カイザリヤの村々へ出かけられたが、その途中で、弟子たちに尋ねて言われた、「人々は、わたしをだれと言っているか」。

28 彼らは答えて言った、「バプテスマのヨハネだと、言っています。また、エリヤだと言い、また、預言者のひとりだと言っている者もあります」。

29 そこでイエスは彼らに尋ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと言うか」。ペテロが答えて言った、「あなたこそキリストです」。

30 するとイエスは、自分のことをだれにも言ってはいけないと、彼らを戒められた。

31 それから、人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日の後によみがえるべきことを、彼らに教えはじめ、

32 しかもあからさまに、この事を話された。すると、ペテロはイエスをわきへ引き寄せて、いさめはじめたので、

33 イエスは振り返って、弟子たちを見ながら、ペテロをしかって言われた、「サタンよ、引きさがれ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。

34 それから群衆を弟子たちと一緒に呼び寄せて、彼らに言われた、「だれでもわたしについてきたいと思うなら、自分を捨て、自分の十字架を負うて、わたしに従ってきなさい。

35 自分の命を救おうと思う者はそれを失い、わたしのため、また福音のために、自分の命を失う者は、それを救うであろう。

36 人が全世界をもうけても、自分の命を損したら、なんの得になろうか。

37 また、人はどんな代価を払って、その命を買いもどすことができようか。

38 邪悪で罪深いこの時代にあって、わたしとわたしの言葉とを恥じる者に対しては、人の子もまた、父の栄光のうちに聖なる御使たちと共に来るときに、その者を恥じるであろう」。

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