10 エステルは困りました。 どうしたらよいのでしょう。 そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへやりました。
11 「この国では、お呼びもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも即刻打ち首なのです。 陛下が金の笏を伸べてくだされば別ですけれど……。 それにもう一月も、陛下は私を召してくださいません。」
12 ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。
13 しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。 「ユダヤ人がぜんぶ殺されるというのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。
14 もしも、この事態をおまえが手をこまぬいて見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人をお救いになるだろう。 だがいいか、おまえと一族だけは滅びると覚悟しておけ。神様がおまえを王妃となさったのは、ひょっとして、この時のためかもしれないのだぞ。」
15 折り返し、エステルからの返事が届きました。
16 「シュシャンにいるユダヤ人をぜんぶ集め、私のために断食させてください。 三日間、昼も夜も、飲み食いしないでください。 私も侍女もそういたしますから。 そのあと、国禁を犯してでも陛下にお目にかかるつもりです。 そのために死ななければならないのでしたら、いさぎよく死にましょう。」