1 こうして、王とハマンはやって来たのです。
2 酒がふるまわれるころ、王はもう一度たずねました。 「エステルよ、いったい何が欲しいのじゃ。 願い事を申すがよい。 何なりとかなえてやろう。 帝国の半分でもな。」
3 ついに、王妃エステルの重い口が開きました。 「ああ、陛下。 もし、もし私をいとしいとお思いでしたら、そして、もしこの事がおこころにかないますなら、何とぞ、私と私の同胞のいのちをお助けください。
4 このままでは、私も同胞の者たちも助かるすべはありません。 皆殺しにされる運命なのです。 奴隷に売られるだけなら、口をつぐんでもおれました。 もちろんその場合でも、陛下は測り知れない損失をこうむられたでしょうけれど。 実際、それはお金では償えないものでございます。」
5 王は唖然として言いました。 「はてさて何のことを申しておるのかな。 かわいそうに、いったいどこのどいつが手出しをするというのじゃ。」
6 「恐れながら陛下、ここにおりますハマンこそ、悪の張本人、私どもの敵でございます。」二人の目の前で、ハマンの顔からはみるみる血の気が引いていきました。