1 ヨブの返事。
2 「あんたが博学で、何でもご存じだってことは、よくわかった。だがな、そんな知恵なんか、あんたといっしょに滅んでしまえ。
3 あんたも、わしと似たりよったりさ。 それくらいのことは、だれだって知っているよ。
4 わしは、神様に助けを願い、じきじきに答えていただいたこともあるのに、今は人の笑い草になってしまった。 品行方正なわしが、物笑いの種とはな。
5 その一方では、金持ちどもが、難儀している者をあざけり、困っている者を目ざとく見つけてばかにする。
6 物取りは栄えるものだ。 さあ、かまうことはないから、神様を怒らせてみたらどうだ。 別に罰があたるわけでもあるまい。 それでも神様は、必要なものはぜんぶ下さるだろうよ。
7-9 神様がどうしようもないわからず屋だってことぐらい、だれでも知っている。 犬畜生でも、それぐらいのことは知っている。 鳥に聞いてみろ。 そうだと答えてくれる。 地と、海の魚に教えてもらえ。 同じ答えが返ってくるさ。
10 すべての生き物のいのちと、すべての人間の息とは、共に神様の御手のうちにあるからだ。
11 舌が、うまいかまずいかを区別するように、思考力は、耳に入ることばが本当かうそかを聞き分ける。
12 お説のとおり、わしのような老人には知恵と分別がある。
13 だが、本物の知恵と力は神様だけのものだ。ただ神様だけが、わしらのなすべきことをご存じだ。 何といっても、神様には思慮がある。
14 おまけに、神様の力ときたらどうだ。 神様がこわしたものは、二度と建て直せない。 神様に追い詰められたら、観念するしかない。
15 神様が雨を引き止めると、地は砂漠となり、嵐を送ると、水浸しになる。
16 このように、力と知恵は神様のものだ。 欺く者も欺かれる者も、共に神様の奴隷であることに変わりはない。
17 神様は助言者と裁判官をなぶりものにする。
18 王を奴隷の身分に落とし、その召使たちを自由の身にする。
19 祭司は奴隷のように売られていく。 神様は権力者を落ちぶれさせる。
20 雄弁家からは声を、長老からは見識を奪い取る。
21 君主をさげすみ、勇士を腰抜けにする。
22 やみを光の洪水とし、死の暗い陰さえ明るくする。
23 国を興したかと思うと、滅ぼし、大国にしたかと思うと、没落させる。
24-25 王の分別を取り去り、道案内の明かりもないまま、手探りでやみの中をさまよわせる。