1 モアブについて、イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう言います。ネボの町はひどい目に会い、跡形もなくこわされる。 キルヤタイムの町は占領され、それを守る要塞はつぶされる。
2-4 もう、だれもモアブのことを鼻にかける者はいない。 その命はつけねらわれているからだ。 すでにヘシュボンでは、モアブを破壊する手はずが整った。 「さあ、あの国を滅ぼして、地上から抹殺しよう」と、彼らは言う。 マデメンはひっそり静まり返っている。 一方、ホロナイムには戦いの物音が近づく。 こうして、モアブは全滅し、その叫び声はツォアルにまで響く。
5 泣きながらルヒテの坂を上る避難民の耳には、下に見える町からの、恐怖の叫びが聞こえる。
6 いのちが助かるために逃げ、荒野に身をひそめよ。
7 おまえたちは自分の腕を頼みとし、富を誇ったので、滅びる。 おまえたちの神ケモシュは、祭司や重立った人たちとともに、遠い国へ連れ去られる。
8 村も町も、高台にあると谷間にあるとの区別なく、すべて滅びる。 わたしがそう言ったからだ。
9 モアブに羽が生えてどこかへ飛んで行けたら、どんなにいいだろうに。 この国の町々には、いのちある者は一人もいなくなるからだ。
10 モアブの血を流すのをいとい、剣を抜くのをひかえる者は、のろわれよ。 わたしが与えた仕事に手をつけない者は、のろわれよ。
11 モアブは建国以来、外敵から守られ平穏無事に過ごしてきた。この国は、びんからびんに移し変えられないぶどう酒のようで、香りがよく、口あたりがなめらかだ。 だが今度は、捕虜として外に注ぎ出される番だ。
12 乱暴者が来て、つぼからつぼへ荒々しく移し変え、しかも、そのつぼを粉々に砕く時がすぐにくる。
13 その時になってはじめて、ベテルでイスラエルが子牛の偶像を恥ずかしいと思ったように、モアブは自分の偶像ケモシュを恥ずかしく思うようになる。
14 あなたがたは、「われわれは英雄だ。 歴戦の勇士だ」とうぬぼれていたころのことを覚えていますか。
15 しかし今、「モアブは滅ぼされようとしている。 滅ぼす者が近づいている。 えり抜きの若者も血祭りにあげられる」と、天の軍勢の主である王が言います。
16 大きな災害が足早にモアブに近づいています。
17 モアブの友人たちよ、モアブのために大声で泣きなさい。 力と美しさを誇ったこの国は、粉々に砕かれました。
18 ディボンの人たちよ、栄光の座を降り、ちりの中に座りなさい。 モアブを滅ぼす者はディボンも荒らし、すべての塔を倒すからです。
19 アロエルの住民よ、道のそばに立って、モアブから逃げて来る人たちに、「いったい何が起こったのですか」と聞いてみなさい。
20 彼らは答えるでしょう。「モアブは焼け野原になりました。 大声で泣きなさい。 アルノン川の土手で、モアブは滅びたと伝えなさい。」
21 平地にあるすべての町は廃墟になりました。 神様の刑罰は、これらの町ぜんぶに下されたのです。 ホロンも、ヤハツ、メファアテも、
22 ディボン、ネボ、ベテ・ディブラタイムも、
23 キルヤタイム、ベテ・ガムル、ベテ・メオンも、
24 キルヨテ、ボツラも、それに、モアブの国の遠くや近くにあるすべての町々も、同じ運命に会いました。
25 モアブは角を切り取られ、両腕を折られ、すっかり骨抜きになりました。
26 酔っぱらいのようにふらつき、倒れるままにしておきなさい。 神様に背いた罰です。 モアブは自分の吐いたへどの中で転げ回り、すべての人にさげすまれます。
27 それというのも、イスラエルをさげすんで強奪し、それが倒れた時、手を打って喜んだからです。
28 モアブの人たちよ、町を捨てて逃げ、岩の裂け目に巣を作る鳩のように、ほら穴に住みなさい。
29 モアブの思い上がりは度はずれのものだったので、私たちの耳にまで達しました。 その、他人を見下す横柄な態度、思い上がった心を、私たちは知っています。
30 「わたしはモアブの思い上がりを知っている」と、神様は言います。 しかし、そのうぬぼれは根拠のないもので、から威張りにすぎません。
31 私はモアブのために泣き、私の心は、キル・ヘレスの人々のことを思って痛みます。
32 ぶどうのお陰で富んでいるシブマ(良質のぶどうの産地)の人よ。私はヤゼルの人以上に、あなたがたのために泣きます。 滅ぼす者が来て、よく伸びたあなたがたのつるを切り、ぶどうと夏のくだものを横取りしたからです。 そのため、あなたがたは丸裸になりました。
33 実り豊かなモアブから、喜びと楽しみの声が消え、酒ぶねに入れるぶどうもなく、喜びの声をあげてぶどうを踏む者もいません。 なるほど、叫び声は聞こえますが、それは歓声ではありません。
34 恐怖と苦痛の、身の毛もよだつ叫び声が、ヘシュボンからエルアレとヤハツ、ツォアルからホロナイムとエグラテ・シェリシヤに渡る国中に響きます。 ニムリム川沿いの牧草地は、今ではすっかり荒れ地になりました。
35 「わたしは、モアブが偽の神々を拝み、偶像に香をたくのをやめさせた」と、神様は言います。
36 私は、モアブとキル・ヘレスのために嘆き悲しみます。 彼らのせっかくの富も消えうせたからです。
37 彼らは苦しみもだえて頭の毛とひげをそり、手に傷をつけ、袋を作る荒布を身にまといます。
38 どのモアブ人の家からも、路上からも、泣き悲しむ声が聞こえます。 「わたしがモアブを、だれも見向きもしない古いびんのように割ったからだ」と、神様は言います。
39 なぜこわされたのでしょう。 泣きわめく声を聞き、モアブの恥に目を留めなさい。 モアブは今、周囲の人たちにとって、恐怖とさげすみのしるしとなっています。
40 「モアブの上空を、不吉の使者のはげたかが輪を描いて飛んでいる」と、神様は言います。
41 町々は攻め取られ、要塞はつぶされます。 大の勇士も、産みの苦しみをする女のように、恐れに取りつかれて弱くなります。
42 モアブは、もはや国ではありません。 神様に大きな口をたたいたからです。
43 「モアブよ、恐れと罠と裏切りが、おまえの分け前になる。
44 逃げる者は落とし穴に落ち、そこからやっとはい上がったかと思うと、今度は罠に足をはさまれる。 わたしは、おまえがどんなにもがいても脱出できないように、目を光らせる。 おまえの刑罰の時がきたのだ」と、神様は言います。
45 彼らは、やっとの思いでヘシュボンまで逃げのびますが、それ以上は行けません。 シホンの先祖の土地であるヘシュボンから火が出て、国の端から端までなめ尽くし、反逆者たちをみな焼き殺します。
46 ああ、モアブよ。 恐ろしい運命があなたを待ち受けています。 ケモシュの神を拝む人々は滅びました。 あなたの息子と娘は、奴隷として連れ去られます。
47 「だが、後日、わたしはモアブの国を再建する」と、神様は言います。モアブについての預言は、これで終わりです。アモン人について