1-2 ところで、至る所に、鼻持ちならない悪がはびこっています。ある人は、神様から巨万の富と名誉をいただき、欲しいものは何でも手に入る身分でありながら、人生を楽しむだけの健康に恵まれていません。 そのため早死にして、全財産を他人の手に渡してしまいます。これは実に悪質な冗談で、やりきれない思いがします。
3 一方では、百人の息子と娘に恵まれ、長寿を全うしながら、わずかばかりの遺産もなく、子供たちは満足な葬式さえ出せないことがあります。 この人は生まれて来なかったほうがましです。
4 誕生が喜ばれず、闇から闇に葬られ、名前さえつけてもらえず、
5 陽の目も見ず、その存在さえ知られないとしても、みじめな老人になるよりずっとましです。
6 何千年生きたとしても、満足することがなければ、生きていることに何の価値があるのでしょう。
7-8 りこうな人もばか者も、食べ物を得るために人生を費やしますが、もうこれで十分だということがありません。 そういう意味では、どちらも同じです。 しかし、貧しくてもりこうな人は、ずっとましな生活をしています。
9 手の中の一羽の鳥は、やぶの中の二羽より価値があります。 あこがれているものを夢見ているだけでは、ばかばかしいことで、風をつかまえるようなものです。
10 あらゆるものには定まった運命があります。 それぞれの将来は、ずっと以前からわかっています。 だから、自分の運命について神と議論してもむだです。
11 しゃべればしゃべるだけ、口にすることばの意味が薄れてきます。 だから、全然しゃべらないほうがましです。
12 空しい人生のわずかの歳月だというのに、どうしたら最高の生き方ができるのかわかりません。 死んだ先のことまで考えると、何が最善かを言い当てることはできません。 将来の見通しのつく人は、一人もいないからです。