1-2 やがて、向こうから、エサウが四百人の手勢を引き連れて来るのが見えました。 ヤコブは、今度は家族を幾つかのグループに分けました。 二人のそばめとその子供たちは先頭に、レアとその子供たちが次、そしてラケルとヨセフを最後というふうにです。
3 そして自分は、いちばん先頭に立ちました。 距離はどんどん縮まります。 ヤコブは、立ち止まっては深々と頭を下げ、またちょっと行ってはおじぎをするというぐあいに、七度もくり返しました。
4 それを見たエサウは走り寄って出迎え、弟をぎゅっと抱きしめると、愛情を込めてキスをしました。 感激のあまり、二人は涙にくれるばかりです。
5 エサウは女と子供たちを見て尋ねました。 「あの連れの者たちは?」「私の子供です。」
6 まず二人のそばめが子供たちといっしょに進み出て、ていねいにおじぎをしました。
7 次にレアと子供たち、最後にラケルとヨセフが、あいさつしました。
8 「ここへ来る途中、たくさんの家畜の群れを見たが、あれは何だ。」「私からの贈り物です。 ほんの心ばかりのものですが、ごあいさつ代わりに……。」
9 「わっはっは、ヤコブ、おれは家畜なら十分持ってるよ。 わざわざ贈り物をくれなくったってな。」
10 「そんなことを言わず、受け取ってください。 兄さんのにこやかな笑顔を見てほっとしましたよ。 ほんとうを言うと、兄さんに会うのがこわかったんです。 神様の前に出る時のようにね。
11 遠慮するなんて水くさいですよ。 気持ちよく納めてください。 神様のおかげで、私もちょっとは財産を持てる身になったのですから。」 ヤコブが言いはるので、とうとうエサウは贈り物を受け取りました。
12 「さあ、そろそろ出かけよう。 道案内はおれたちが引き受けるぞ。」
13 「ありがとう、兄さん。 でもせっかくですが、ご覧のとおり、小さな子供や生まれたばかりの家畜もいることですからね……、あまり急がせたら、群れは死んでしまうでしょう。
14 そんなわけですから、兄さんは先に行ってくださいよ。 私たちはあとからゆっくり行きます。 セイルでまたお目にかかりましょう。」
15 「ま、いいだろう。 それじゃあ、手伝いに何人か残していくから、道案内にでも使ってくれ。」「それには及びませんよ。 私たちだけでもなんとかなります。ここはひとつ、私の言うとおりにしてください。」
16 エサウはその日、セイルに向けて出発しました。
17 一方ヤコブの一家はスコテまで行くとテントを張り、家畜の群れには囲いを作りました。 そこがスコテ〔「小屋」の意〕と呼ばれるのはそのためです。
18 それから、無事カナンのシェケムに到着し、町の外にテントを張りました。
19 その土地を、ヤコブはシェケムの父ハモルの家から銀貨百枚で買い取り、
20 そこに祭壇を築いて、エル・エロヘ・イスラエル〔「イスラエルの神様のための祭壇」の意〕と名づけました。